演奏会の裏話 6.弦切れ

あきひろ佐藤

2007年04月14日 07:28

学生最後の冬の定演に向けてオケが始動したのは、夏の定期の前だった。
普通ならば、演奏会が終わる前に、次の曲の準備はしない。
だが前プロ、ベートーベンの4番、メイン、ストラビンスキー「春の祭典」では、
事情が変わってくる。

早々にビオラの、おっしょさんから、都響で使用した楽譜を入手し、演奏のつぼを伝授していただいた。
フラジオ(ハーモニックス)が、全く分からず手紙で知らせてもらう。
本当に優しい先生だった(手紙は今も宝物にしている)。
春の祭典では、1部でビオラが4人だけで演奏する所と、2部の
しーんと静かな中、2カ所ビオラだけで奏く大きな山が3つある。
なかなかメンバーがそろわず、エキストラの方、もちろん私の師匠にも
ソリに加わっていただいて、ようやくといった塩梅だった。

編成も通常のに加えて、ティンパニー追加1セット、バストランペット、
アルトフルート,バスクラリネット、ワーグナーチューバ、、、、と異色の楽器が使われる。
変拍子のみならず、音も不協和音が一杯で、正しいのかどうなのか、こんがらがってくる。
只でさえ、ビオラのユニゾンとは、単二度で響く?事とと、ジョークされる始末。
またベートーベンの4番、一見簡単そうなのだけれど、
曲全体を仕上げるのは、難しい曲である。

異例の事だが、ソロのこともあり、私が首席を務めることになった。
指揮は小林先生。

ステリハでは、特に何事もなく順調に進んだ。
たたし当日就職先の内定者懇談会があり、遅れてのステリハになった。
ちなみに懇談会は早退し、社長と会う事は二度となかった。
ステリハが終わった後、ビオラ8人で、ソリを確認して本番となる。

冒頭、ファゴットが危なげなく吹ききる。彼のファゴットは本当に上手い。
木管も良い感じ、ホルンも良く鳴っている。
ところが、あまりに興奮してしまったせいなのか、
1部の終わりのあたりで、私の最高弦A線が、ブチッ!!!!
真っ白である。
即後ろの同期から楽器を借りる。
取られた同期はステージ袖まで行って、予備の楽器を持ってくる。
バイオリンならば、これでめでたしめでたしなのだが、
ビオラはそうはいかない。
私のビオラ42cm(胴体の長さ)、借りたビオラ38cm?差がありすぎた。

2部の1回目のソリは、何とか凌いだ。
しかし2回目、私は1回目で安心したのか、ポジションが分からなくなった。
簡単な音なのに、、、、、、
結局、核となる旋律がボロボロになってしまって、ビオラ全員ほぼ崩壊、、、
ソロの最後1フレーズだけ、ハモッタかどうだか、、、、
後は何をどう奏いたか、覚えていない。
ただ悔しかった。
トラウマとなったのだろう、その演奏会の録音や曲まで10年近く聴けなかった。

それ以来演奏会では、必ず弦1セットを近くに用意することにした。
ある1回を除いて。
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