良さんの話 9.誤算

あきひろ佐藤

2007年04月29日 09:14

良さん(父)は、帝国陸軍で92式重機関銃の銃手をしていたが、あまり気の進まないものであった。
理由は、先週書いたとおり、人を撃ちたくもないし、撃たれたくもない。
只それだけだったようだ。

そんな時、銃機関銃小隊に衛生兵が居ない事が判明したのか、「誰か衛生兵を志願するものは居ないか?」との上官の声が聞こえた。
良さんは、迷わず「志願します!!。」と返事をしてしまった。

あたりの者は、どうして???と言わんばかりの顔つきだったそうである。臆病ものだ、と言う訳だ。
良さんもその事は承知していたが、自分の考えを曲げる事は出来ない性分だし、
生きていてこそ何ぼのものだから、役目として必要ならばと思ったのであろう。
少なくても最前戦に行くことは無い、と思っていたそうである。

だがそれは、大きな誤算だった。

関連記事