良さんの話 22.原因は

あきひろ佐藤

2009年02月06日 01:24

大正末期、江差に生まれた良さん(父)は数奇な運命にて、
裕福な幼少をおくり、また貧しい十台前半を向かえ、軍属になり仕送り生活。
二十歳で召集、衛生兵で敗戦、戦後を迎えた。

労働基準監督署の仕事を得たものの、どういう訳か江差に居ることが出来なくなり、
夕張を経て旭川に来ることになった。
昭和25年の事である。

理由を聞こうにも、良さんは一昨年肺炎を起こして入院したり、バタバタしたものだから、
中々聞くことが出来なかった。

また江差に居られなくなった理由が理由だったから、母のいる前では、
八十超えて金結も過ぎた仲でも、そう簡単に話すのは躊躇われたのだろう。

原因は女。

江差病院の看護婦さんと、仕事の関係で知り合い、恋仲になったそうである。
だがその女性の母親が何故か反対し、グズグズしてしまったそうである。
そのうち札幌労基署への異動話がもちあがる。
良さんはその女性と結婚すべく労基署を辞めて、地元の建設関係の仕事に就こうとしたらしい。
しかし時既に遅し、その女性の恋の炎は消えてしまったらしい。

バツの悪いというか、どうにも狭い街にいられなくなった良さんは、
伯父を頼って夕張で炭鉱のアルバイト、旭川の小さな製紙会社に職を得た。
旭川では、小鳥を飼っていたそうである。

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